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5D石垣島漂着ゴミ回収プロジェクト(3. 実証実験を行う)
Working Backwards サービス・商品の企画開発
CustomerPerspective
代表取締役
武蔵野大学データサイエンス学部 客員教授
Contents
アイディアは石垣島の美しい海岸で生まれる
石垣島の美しい海岸を歩いていると、色々なアイディアが浮かんできます。前回のブログで投稿したWorking Backwardsのプレスリリースの概要も海岸を歩きながら考えました。
出来上がったプレスリリースを清木学部長をはじめ武蔵野大学データサイエンス学部の関係者のみなさまに共有したところ、「これは面白い」と嬉しくなるようなフィードバック。A4一枚というシンプルな書類で理想の姿を伝えられるのがWorking Backwardsの良いところです。「まずは一度やってみることが大切。小さくてもいいから実証実験をしましょう」と盛り上がりました。
目的は、マーケティングの手法で環境保護に対する人の善意の行動に影響を与えることができるのかを検証することです。実証実験の役割を担うキャンペーンの実現方法を考えることにしました。プレスリリースは「理想の未来像」のためすぐには実現できないことも多く、実証実験には様々な工夫が必要です。
地域通貨「まーる」との出会い
実証実験の役割を担うキャンペーンを実施するにあたり、回収のインセンティブを提供したい。そこで注目したのは石垣島の地域通貨「まーる」です。「まーる」は、面白法人カヤックの「まちのコイン」が提供する地域通貨のひとつ。石垣島ではたくさんのお店や団体が活用しています。「まーる」という名前には、地域内で感謝がまわって(まわる=まーる)欲しいといった意味が込められています。
「まーる」に参加しているのは、普通はお店。今回はお店ではなくプロジェクト。まーるに参加可能か心配でしたが「漂着ゴミの回収をすすめたい」という趣旨をそえて、参加を申し込んだところ、カヤックの皆様に快くご協力いただくことができました。
それだけでなく、「まーる」の使い方やマーケティングの方法について、カヤックとグループ会社カヤックゼロのみなさまに、貴重なアドバイスをいただくことに。その結果、漂着ゴミ回収プロジェクトのチラシが、カヤックゼロが運営するコワーキングプレース「チャレンジ石垣島」の掲示板や、石垣島の公設市場に出現しました。
「島ぞうりコンテスト」の舞台裏
キャンペーンで検証したいことのひとつは、健全な競争が人の行動を変えるのか。キャンペーン参加者を増やし、盛り上げるために、コンテストを実施し、まーる獲得で上位になった人に魅力のある賞品をさしあげたいと考えました。
読者のみなさまなら、どんな賞品がもらえるなら「コンテストに参加しよう」と思うでしょうか。
カヤックゼロのスタッフの方に相談したところ、「ゴミ回収につかえる軍手などを賞品にすれば盛り上がるのでは」との貴重なアドバイス。予算は限られていますが、石垣島ならではの特別感があるものにしたい。軍手を含めたいくつかの候補を検討しました。賞品選びは、漂着したサンゴのかけらの中から完璧な形の巻貝を探すような気分です。紆余曲折の末ねらいをつけたのが、石垣島ではお馴染みの島ぞうり。しかも魚やウミガメのイラストの入った手彫り島ぞうりなら、石垣島のコンテスト参加者にも喜んでもらえるはずです。
以前印刷をお願いしてお世話になった、「島ぞうりファン」さんに相談したところ、「最近他の仕事が忙しくて彫っていないんです」とのコメント。コンテストの先行きに、石垣島の突然の夕立の前のように暗雲が立ち込めました。あきらめずに交渉したところ、今回キャンペーン用に特別に、しかもお得な料金で彫っていただけることに。手作業なので、何と1日に1足しか彫れないそうです。
「石垣島ハロウィン」の「オバケスポンサー」になるまで
キャンペーンを知っていただき、盛り上げるための方法も考えたい。カヤックのスタッフの方に教えていただいたのが、石垣ハロウィン。石垣ハロウィンは、漂着ゴミを活用して子供達が仮装するとても楽しいイベントです。私たちのプロジェクトの趣旨にもぴったり。イベントで漂着ゴミ回収プロジェクトのことをご案内いただけないだろうか。
石垣島ハロウィンでは、オバケスポンサーという協賛企業を募集していました。プロジェクトに大きな予算はありません。そこで頭をひねって、ハロウィンに参加する子供たちにあげるお菓子を提供して協賛できないかと考えました。主催者の中心人物、縄文企画の田中代表にご相談したところ、ご快諾。
人気のロイズ石垣島の「ちんすこう」にハロウィンの「お化け」と「かぼちゃ」のシールを貼り付けるとハロウィンの特別なプレゼントに早変わり。子供たちに喜んでもらえるように、お菓子の箱ひとつひとつに心をこめて貼り付けます。石垣島漂着ゴミ回収プロジェクトはこうして「オバケスポンサー」としてイベントを協賛することになったのです。
顧客体験から「つまずきポイント」をなくす
最後に必要なのが、回収の写真やゴミ回収の日時・場所・内容などを投稿する5D World Map Systemとの連携でした。「まーる」をためたりつかったりするにはモバイルアプリが必要です。どんな顧客体験になるのかを実際にテストしてみたところ、5D World Map Systemは、デスクトップでの利用を主に想定していることが判明。モバイルアプリからで「まーる」をもらえるキャンペーンに応募した後に、5D World Map Systemでの投稿をスムーズにつなげるものが必要です。
解決策として活用したのがSaaSのオンラインフォーム作成ツール。モバイル投稿にも対応しており、入力も簡単。開発不要ですぐ使えるので便利です。私がサービスの顧客体験設計でいつも大切にしている「つまずきポイントをなくす」ために役立ってくれるはずです。
苦労も楽しんで乗り越える
地域通貨のインセンティブ、島ぞうりを賞品としたコンテストのしくみ、環境保護イベント、5D World Map Systemとの連携と、マーケティングの仕組みがそろいました。キャンペーン事務局スタッフと一緒に、今回は私も腕まくりして、チラシ作りから島ぞうり制作のお願いまで直接かかわることに。私がマーケティングの世界に入ったころに、キャンペーンの事務局でやっていたことを思い出し、ワクワクします。
一方で、キャンペーンの開始までには、実装・運用にかかわる筆舌に尽くしがたい困難がたくさんあり、心が折れそうになったこともありました。この話は細かいのでブログでは省略しますが、楽しんで取り組むことでで乗り越えることができました。
さて、キャンペーンの結果はどうなったのでしょうか。次回は5D石垣島漂着ゴミ回収プロジェクトのブログの最終回。キャンペーンの結果と、プロジェクトからの学びをお伝えします。
関連リンク
Working Backwards(ワーキング・バックワーズ)日本語版「アマゾンの最強の働き方」(ダイヤモンド社刊)
Working Backwards(ワーキング・バックワーズ) – BezosとJobs、Backcastingの思考に見る独自性と共通点